選手にも知っていてもらいたい、応急処置「RICE」の方法と考え方
スポーツ現場において応急処置は優先的に知っておくべき内容です。トレーナーはもちろんですが、選手としても理解しておく必要があります。
今回はスポーツにおける外傷時(捻挫など)の対応について記しておきたいと思います。
1 従来の応急処置「RICE」
2 RICEの目的
3 RICEの方法
1 従来の応急処置「RICE」
スポーツやトレーナー系の学生で学ぶ「RICE」が一般的な対応になります。RICEとはR:Rest(安静) I:Icing(冷却) C:Compressipn(圧迫) E:Elevation(挙上)の頭文字をとって表記されています。
足首の捻挫を例にとって考えてみましょう。
患部を安静にし、氷で冷やし、弾性包帯などで圧迫し、椅子などに患部を挙げておく。こういった処置を思い浮かべられると思います。
これは正しい処置ですが、RICEの目的や効果を理解して行えているかが大切です。何となく冷やして待っているようになってしまっていませんか?正しく理解していれば、適切なRICE処置を行う必要があります。
2 RICEの目的
簡単なことで、実は見落としていると思います。RICE処置の時点で競技復帰のことを考えなくてはなりません。早く復帰するために肝心なことは「自然治癒を妨げない」ということです。人体が自分で治す過程を妨げないということです。
捻挫の重症度はⅠ度~Ⅲ度に分類されます。分類法は今回割愛しますが、Ⅰ度損傷では1~2週間、Ⅱ度損傷では6週前後、Ⅲ度損傷では数か月、または手術の検討が復帰に必要になってきます。もちろん状態によって多少の増減はありますが…。
痛みや機能障害を残して、これより早く復帰することを目標としません。この通りの時期に復帰することから逆算して、受傷当日に行うべき処置が「RICE」なのです。
超急性期は2~3日です。その時間で炎症期を終えていなければなりません。炎症も治癒過程では大切な現象です。炎症をなくすのではなく、過剰な炎症を抑え、炎症時期を的確に終えるためにRICEが必要になります。
大切なのは「外傷のみの症状で炎症期を終える」ことです。簡単そうで難しいです。生活するために痛む足で歩かなくてはなりません。週末に捻挫をして、2~3日後に病院受診する時点で残っている痛みは、初めに捻挫した以外の要因で残っている炎症かもしれません。ほとんどの場合、こういった経緯をたどります。そこから復帰までの時期が示されます。
復帰時期の目安は、受傷後からの目安であるべきです。捻挫をしてしまった時点で自然治癒が始まります。そこで一番最初に行うのが「RICE」なのです。ここまでの意味をまず把握しておいてください。
3 RICEの方法
痛みを発端として炎症が始まります。発赤・腫脹・発熱・疼痛が炎症の4徴候です。炎症だけで話が長くなりそうなので、これも割愛します。
炎症は起こるべき防御反応ですが、過剰に起こすのもよくありません。痛みを発端としているので、痛みを過剰に起こさないようにする必要があります。
大切なのはCompression(圧迫)とElevation(挙上)です。
指を切ってしまって、流血したときにあなたはどうしますか?ほとんどの人は血管を圧迫して指を心臓より高く挙げて止血すると思います。1番最初に冷やそうとしますか?
捻挫を起こした部位の血管が壊れ、内出血するかもしれません。過剰な炎症は血管から血漿成分が漏れ出し、発赤・腫脹・発熱を助長します。圧迫と挙上こそが行うべき処置の上位だと思います。
Icing(冷却)は科学的根拠において「疼痛抑制」のみ認められています。冷やす目的は疼痛緩和だけです。痛みが過剰に出てしまうには冷やすことは効果的ですが、熱を冷ます、組織を低温で保存するなどの見解は間違いです。
何となく冷やして、グラウンドの外で試合や練習を見てるだけだとしたらRICEを的確に行えていることではありません。きちんと圧迫、挙上してください。氷があれば冷やすことは推奨ですが、圧迫・挙上は必須だと思ってください。
その次にRestについて考えてみます。
捻挫直後はさすがに痛みが強く、動かそうとはしないはずです。冷却・圧迫・挙上しているときは必然的に安静にしているでしょう。
試合や練習が終わり、やはり歩かなくてはなりません。
そこで「自然治癒を妨げない」ために、私は歩かない方がいいと思います。これができないから2次的な炎症を起こして2~3日以降も炎症が残るのです。
痛む、正常歩行ができないなら、松葉杖での免荷をおすすめします。必要であれば固定してもいいでしょう。大げさかもしれませんが、復帰を早く(目安通りに復帰)したいなら、この2~3日が勝負です。
ここで勘違いしてほしくないことがあります。動かさない、歩かないと衰えてしまうと思っている人が多いと思いますが、その考えは捨ててください。
怪我をしたのです。衰えるのは当たり前です。2~3日で炎症期を終えてから取り戻すのと、痛み・正常歩行ができない状態で長引くのとでは、どちらがより衰えるでしょうか。
復帰するためです。大げさくらいにした方がいいと思います。これが安静における大切なことです。
今回の「RICE」はトレーナーはもちろん、選手も知っていてもらいたい内容です。RICEの説明に私の経験と見解を付け加えているものです。特に痛くても休ませないという指導者にも知っていてもらいたいことです。
1の項目で「従来の」と書きましたが、この数年の間にRICEも変わってきています。次回で現在のRICE処置の方法をお伝えしたいと思います。