応急処置「RICE」から「POLICE」へ

2019/05/21 ブログ
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前回のブログでは怪我をした場合の応急処置として「RICE」を紹介しました。

「RICE」の目的や方法に私の見解も付け加えさせてもらいました。痛いから冷やして休むという取り組みではいけないということです。

前回のブログに「従来の応急処置」としてRICEを紹介しています。今回はここ数年で変わってきた見解を紹介したいと思います。

※前回のブログも合わせて読んでもらえると。よりわかります!

選手にも知っていてもらいたい、応急処置「RICE」の方法と考え方

 

 

 

 

 

1 現在の応急処置「POLICE」

2 「POLICE」よりも大切なこと

 

 

 

 

1 現在の応急処置「POLICE」

 

安静だけでは損傷した組織の保護ができないという考え方が出てきました。そこでRICEにおけるRest:安静の見直しがされ、新たに「Protection:保護」が登場します。固定などで損傷した組織を守るのが大切です。

今回も足首の捻挫を例にとりましょう。RICEを行っている間は冷やして、圧迫して、挙上しています。安静は保たれているでしょう。その後やはり歩いてしまいます。前回のブログでも書きましたが、痛みを発端として炎症が起こります。治癒過程で必ず起こる炎症は悪いことではありませんが、過剰な炎症は治癒を遅らせます。そのために炎症期の2~3日はできるだけ二次的損傷を起こしてほしくないのです。

そのために固定や免荷は必要と考えられます。何度も言いますが、炎症期を早く終わらせるために少し大げさで構いません。炎症期が伸びるほどに治癒が遅れていく方がよりマイナスとなります。

 

「RICE」→「PRICE」に考え方が変わってきました。

 

 

その後、必要以上の固定、安静は悪影響という考えが出てきました。そこで「Rest:安静」を「Optimal Loading:適切な負荷」と置き換えられるようになります。この数年前の話です。

 

損傷した組織が修復していく過程で大切なのは循環です。栄養を届け、老廃物を吸収するのが循環の役割です。循環を促すのは関節の運動と筋収縮です。

間違ってほしくないので繰り返しになりますが、関節拘縮が怖くて関節の運動を促すのではありません。筋委縮が怖くて筋収縮をさせるのではありません。肝心なのは「損傷した組織の修復を促進させるために」適切は負荷をかけるのです。

 

関節を動かすと、関節が動いている感覚が入力されます。

筋収縮をさせると、筋に力が入っている感覚が入ります。

荷重ができるならば、荷重している感覚が脳に伝わります。

歩けるならば、バランス能力も使います。

 

普段無意識に行っているメカニズムを使うのが「適切な負荷」と言えます。

 

 

「Protection:保護」で組織を守り、二次的な問題を起こさない。できるようになれば早期から「Optimal Loading:適切な負荷」で循環や感覚を取り戻していく。

捻挫の2度損傷の競技復帰目安は6週前後です。捻挫直後にきちんと対応し2~3日で炎症を終えること、むくみや循環を改善させていること、受傷後1週で歩けていればかなり順調だと言えます。

 

「RICE」→「PRICE」→「POLICE」と考え方が変わってきました。

 

 

 

2 「POLICE」よりも大切なこと

 

捻挫をしたらすぐに対応してください。圧迫、挙上をし、痛みが強ければ冷やしてください。ギプス固定では完全に動かせなくなるので、シーネや装具で固定してください。歩けないなら松葉杖で免荷してください。炎症が治まれば適切な負荷で動かしてください。

 

わかってはいてもできるかは現場によります。圧迫する弾性包帯がありません。氷もありません。シーネや装具、松葉杖を現場で常備できているとも思えません。常時トレーナーがいる環境の方が珍しいです。テーピングもすぐに巻ける環境とも思えません。だから、取り合えず痛みがあれば練習を見学しているしかないのかもしれません。

 

 

固定はすねあてや棒などでもできます。弾性包帯がなければ衣服で縛っても構いません。氷がなければ流水でもいいのです。できることは最低限行いましょう。

 

 

そして一番大切なのは、チームとしてそのようなことが起きたときにどうするかの対応を準備しておくことです。設備だけでなく考え方です。

 

 

チームメイトが怪我をしたから競争相手がいなくなったと喜んでいる選手がいたらどうなるでしょう。

怪我をしたからレギュラーを外されるという固定概念を指導者が押し付けていたらどうなるでしょう。

 

怪我をした選手がいたらどうするか、チームで準備しておいてください。チーム全体で怪我をした選手をケアしてください。怪我をした選手はチームに貢献できる方法を考えてください。

 

目の前に起こった現象を解決する方法を知っているチームは、試合においても強いと思います。日々の練習にも、試合中の問題にもチーム全体の課題として取り組めるはずです。

 

そのために準備をしておくことをおすすめします。

今回は捻挫を例に挙げましたが、これが脳震盪や頸椎損傷、心臓震盪など命に関わる問題であればどうしますか?

 

私は「RICE」でも「POLICE」でもどっちでもいいと思っています。考え方をまとめるためにある表現なだけです。怪我が起こってしまったときに何ができるかの準備をしておくことが、怪我以外においても大切なことだと思っています。