理学療法士が行っている評価、みなもと整体院が行っている評価

2019/05/30 ブログ
ロゴ

理学療法士はどの医療業種よりも「評価」に長けていると思っています。

身体の問題点を解明する手段です。

評価と一言で言ってもどれだけのことをしているのか、理学療法士はどんなことを評価しているのか、また、その観点を記しておきたいと思います。

 

 

 

1 理学療法士の学生が覚える「bottom up」

2 実際の臨床で使っている「top down」

3 私が考える理想の評価法

 

 

 

 

 

1 理学療法士の学生が覚える「bottom up」

 

まず情報を収集します。診察での記録やレントゲン写真などを確認します。患者さんから現在に至るまでの経緯や、日常生活で困っていることなどを細かく聞いていきます。

そして計測をします。関節可動域や筋力など細かく測っていきます。計測項目は数種類~数十種類におよぶこともあります。痛みの程度、種類、部位、痛みが出る状況など痛みだけでもいろいろな情報を得ていきます。

姿勢や動作の観察、分析を行います。臥位・座位・立位での姿勢や、立ち上がり、歩行などの動作を観察し、どこに問題があるかを推測していきます。

 

それらの得た情報を統合し、問題点を抽出します。問題点に優先順位をつけ、改善するための治療プログラムを立てていきます。

治療にかかる期間などを考慮して、ゴール設定をします。ゴールには患者さんの希望に沿っていることが重要です。

 

ここまでが「評価」であり、理学療法士はこの評価能力が高いのです。医師は診断ができる唯一の職業です。検査や画像、注射や薬などを使って診断をします。理学療法士はこれらの行為を行えませんし、診断はできませんが、身体の問題を見極めるこの「評価」能力が高いのです。

そして、この評価を行って初めて「治療」に移るのです。

 

 

理学療法士養成校の実習では、この評価に時間をかけます。臨床実習ではひとりの患者さんを担当し、何度も計測や動作観察をくり返し、問題点やゴール設定、治療プログラムを立てるまで1週間くらいの期間をかけることもあります。

 

この評価法を「bottom up:ボトムアップ」と言い、一つずつ積み上げて統合して解釈する方法となります。学生に指導するにはこの方法が適しています。

 

 

 

2 実際の臨床で使っている「top down」

 

しかし、bottom upは実際の臨床では使えない方法です。評価だけで治療費はもらえないからです。リハビリの初回から治療をして結果を出さなければ患者さんからお金はもらえません。

経験を積んだ理学療法士は「top down:トップダウン」と言って、ボトムアップとは反対の経緯で評価していきます。

 

 

まず姿勢や動作を先に観察します。そこから問題点を推測し、その裏付けのために計測します。

なぜそこに痛みが出ているのかを頭の中で3次元で組み立てて、原因を推測し、その推測が正しいのかを計測するので、正しければ自ずと計測結果は悪くなっています。

 

経験を積むほどにその推測が合っている確率が増し、時間もかからなくなっていきます。計測と治療は同時進行で行い、瞬時に結果を出していきます。

 

学生が1週間かかる評価を、数分~十数分で行い、その日のうちに治療まで行います。そして患者さんから報酬をもらうのです。

 

 

 

3 私が考える理想の評価法

 

top downの観かたで行えるようになるには経験が必要です。経験を積んでも時にはbottom upで評価を行うこともあります。どちらが良いのかではなく、臨床業務ではtop downを行うしか、業務が成り立たないのが現状でしょう。

それゆえにtop downで評価ができるようになるのが一人前みたいなところがあります。

 

早かれ遅かれ、理学療法士であればtop downで観られるようになります。それはゴールではなく、スタートです。

 

 

 

私が考える、いわば実践している評価はtop downではありますが、動作を診ること自体予測しています。

一番大切なのは情報収集です。患者さんとの会話です。

 

初対面から始まっています。動作を観る前にいろいろ話を聞きます。どんな人なのか探ります。どんな生活をしていて、何に困っているのかを聞き出します。そして痛みより先のゴールを見出します。

 

 

その時点でどんな動作をしているのかを推測しています。

 

推測して動作を観ているので、観る観点も絞れています。推測が合っていれば計測しますが、可動域が何度かなど測りません。何度でも構わないと思っています。

 

注意:経験の浅い先生方や理学療法士の学生はきちんと測る癖をつけてください!

 

 

痛みの原因は動作観察の時点で確認作業になります。

 

 

 

 

これなら瞬時に評価、治療まで行えますよね。その確率と時間の短縮があれば患者さんの負担も減りますし、治療に時間をかけられます。

私の実践している評価はこんなに効率的で適格です。

 

しかし、私の評価法だからこそ、効率的ではないように思えます。

 

 

 

 

人を理解するのに時間がかかるからです。

私が実践していることほど厄介で時間がかかるのもはないとも思っています。

 

 

 

痛みの原因はわかりました。治療効果はすぐに出る場合と時間がかかる場合があることも説明しました。

 

結果はどうなるでしょう。人によってまちまちです。

その人が目標に向かって進んでいく人なのか、自分から道を外れていく人なのか、その評価に時間がかかるのです。

 

 

前回のブログを参照にしていただけるとわかりやすいかもしれません。

「みなもと整体院は痛みをとることを目的にしていません」

 

結局評価も「目的」を達成するための「手段」の一つでしかありませんし、治療自体も「手段」でしかありません。

 

 

 

 

みなもと整体院にはいろいろな人が集まってきます。お陰様で何度も通っていただいている方も多くなってきました。その中の多くの方は一番初めに当院に来たときの問題は改善しているケースが多いです。

それでも通っていただいているのはなぜでしょう。

 

 

少しでも私の考えに賛同していただいているからだと思っています。痛みはとれても、まだその方たちの「目的」を達成するまで時間がかかっているのだと思います。

 

申し訳ない反面、そういう方が集まってきていただいていることに喜びも感じています。