スクワット動作からわかること

2019/06/10 ブログ
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理学療法士は3つの面に分析して身体を見分けています。

3つの面とは「前額面」「矢状面」「水平面」です。

以前のブログでスクワット動作を考えていきました。今回はこの3つの面ごとにスクワット動作の確認をしていきます。

 

2種類のスクワットについてはこちら 「スクワット動作を考えてみる」

 

 

 

 

 

1 前額面

 

前額面は前後から見た図です。前方から見て身体は左右対称になっています。身体の中心を「正中」として、上肢・下肢は左右に2対あります。

 

前額面から見て関節が動くと、基本的には「内転」「外転」となります。(脊柱は側屈など、やや変わります)

 

 

スクワットを前額面で観察することでの注意点は、左右に偏りがないかということです。重心がどちらかに偏っていないか、特に骨盤や肩の傾きをチェックします。水平面での注意点で詳しく考えてみますが、膝が内側に入っていないか、つま先が外を向いていないかなども前額面で確認します。

 

両脚でのスクワットでは前額面でのチェックポイントは少ないでしょう。片脚立位や片脚スクワットとなれば、骨盤や肩の傾きの注意点が増えます。左右非対称の動きで確認事項が増えるのが前額面です。歩くなどの基本動作から、スポーツ動作は左右非対称での動きがほとんどなので、両脚でのスクワットで前額面上の問題点が見られることはかなりな問題となります。

 

 

 

 

2 矢状面

 

矢状面は横から見た図です。矢状面上で関節が動くと、基本的に「屈曲」「伸展」となります。

 

 

スクワット動作を矢状面から確認すると、重心が前方、後方にあるかがキーポイントとなります。スクワットには2つの方法があります。是非以前のブログを参照にしてください。

 

膝をつま先から出さないようにスクワットする。つまり後方重心でスクワットをしているかは矢状面での確認になります。

逆に膝をつま先より前に出してスクワットする。前方重心でスクワットしているかも矢状面で確認していきます。

 

 

どちらのスクワットも矢状面で見るべきポイントは「骨盤」です。どちらのスクワットでも骨盤は前傾させるべきです。

 

後方重心でのスクワットで骨盤を前傾できないと、後ろに倒れます。必然的に骨盤は前傾されるので、腰椎の前弯で上体を起こすことになります。バーベルを肩に担いでいる場合、脊柱に垂直に重さを乗せているかが正しいフォームとなります。腰椎の前弯ができているか、腰痛を起こさないために体幹が使えているか、矢状面での確認事項は多くなってきます。

 

前方重心でのスクワットでも骨盤は前傾させなければなりません。しかし後方重心でのスクワットと違い、腰椎は前弯しません。つま先より前に膝を出すため、下腿は前に傾きます。その「下腿の傾き」と「股関節‐肩関節を結ぶ直線」が平行になっていることが正しいフォームです。矢状面上で股関節‐肩関節から一直線にするために大切なのが体幹です。股関節はよく動き、腰椎は固定する。joint by jointで考えても理にかなった動作となります。

 

 

重心の位置が確認できれば、どこに力が入っているかもわかります。正確に言えば、推測できます。

 

スクワットで膝を曲げたときに、重心は膝軸より後方にあります。その距離が近ければ膝伸展トルクは小さくなり、距離がより後方に遠ければ膝伸展トルクは大きくなります。

簡単に言うと、前方重心でスクワットをすると、膝を伸ばす大腿四頭筋は楽で、後方重心では大腿四頭筋の力がより必要になります。

だから後方重心スクワットは「筋トレのためのスクワット」と言えます。

 

 

これを足関節、膝関節、股関節で見ると、どこの力を使っているかが推測できます。どこを的確に使っているか、どこを余計に使ってしまっているか。

どこが動いて、どこが止まっているか。重心が各関節のどこに落ちているか。これらを統合して動作を見ていきます。

 

 

歩行、スポーツ動作では全ての面でこのような見方をしていきます。両脚スクワットでは矢状面での確認事項が多いだけです。

 

 

 

 

3 水平面

 

水平面は上下からみた図です。上から見た断面図だと思ってください。水平面で関節が動くと「回旋(内旋・外旋)」となります。

動作を真上から見ることは実際には難しいので、推測をしていきます。

 

スクワットを前額面からみたときに膝が内側に入ってしまっている場合、膝は回旋を起こしています。膝の外反ではなく、脛骨が外旋してしまっています。つま先が外を向いている場合も、運動連鎖として、脛骨は足部に対して内旋しています。(相対的に)

足部では足根骨やアーチなども考慮しますが、ここでは割愛します。

 

膝が内側に入って、つま先が外を向いている現象を「knee-in toe-out」と言います。knee-in toe-outの弊害はいろいろあります。

joint by joint理論でも足部、膝関節は安定性が求められます。回旋ストレスはさまざまな障害を起こします。

 

前額面上での確認も、水平面で考えていく方が良いでしょう。

 

 

 

 

 

私はスクワット動作は筋トレのための後方重心と、動作習得のための前方重心とはっきりと分けています。動作を見る上で3つの面での観察と重心の位置で筋発揮を推測しています。

これらの観点から、スクワット動作をみることはかなり有益です。スクワット動作での破綻からいろいろな現象が見えてきます。

 

スクワットは実際のスポーツ動作にはまだまだ遠い動作です。正しいスクワットを取得できずにスポーツをすると、どこかを痛める可能性が高いです。パフォーマンスも落ちてしまいます。

 

スクワット動作はいわば「構え」に近いです。簡単なようで難しいスクワット。スポーツに限らず、動作の導入には必須の動きです。正しいフォームを身に着けましょう。