膝前十字靭帯損傷について2 リスクの多いスポーツ

2019/06/26 ブログ
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膝前十字靭帯損傷についてトピックス別に数回にわけて記しておきたいと思います。

2回目の今回は「損傷はどのような場合に起こるのか」です。細かいメカニズムは次回につなげていく予定です。

 

前回のブログはこちら 「膝前十字靭帯損傷について1 解剖の基礎」

 

 

1 受傷機転

2 前十字靭帯損傷が多いスポーツ

 

 

 

 

1 受傷機転

 

前十字靭帯損傷はほとんどの場合スポーツ動作で起こります。コンタクトのあるスポーツに限らず、コンタクトのない動作でも損傷します。

接触型の受傷は30%、非接触型は70%と言われていて、ノンコンタクト時に受傷する方が多くなっています。

 

実際の動作では、急激な減速、カッティング、ジャンプの着地時に受傷の危険が高いと報告があり、やはり非接触時には注意が必要です。

メカニズムについては、そのような危険動作時に膝が内側に入ってしまう(knee-in toe-out)ことがほとんどです。

接触でも非接触でも、前十字靭帯の機能と膝が内側に入る動作が受傷機転になり得ることを覚えておけば理解しやすいでしょう。細かい受傷メカニズムは次回に詳しく書いていきたいと思います。

 

このような状況は前十字靭帯以外にも危険であることに変わりはありません。実際に前十字靭帯単独損傷よりも内側側副靭帯損傷や半月板損傷を同時に起こす外傷の方が多いです。ときには軟骨損傷や骨挫傷も合併していることもあります。

 

膝関節腫脹(水腫・血腫)は必発するでしょう。損傷部位などによって膝崩れ感(Gving Way)やロッキングなどの症状が出てくる場合があります。何にしても上記のような受傷機転と痛み、腫れがある場合は病院受診してください。MRIが有効な検査となり、しっかりと診断をしてもらうことが大切です。

 

 

 

 

 

2 前十字靭帯損傷が多いスポーツ

 

上記のような動作の多いスポーツは自ずと受傷発生が多くなります。

 

前十字靭帯損傷の起こりやすい競技はサッカー、バスケットボール、ハンドボール、バレーボール、柔道、スキー、ラグビー、アメリカンフットボール、ラクロスなどが挙げられます。ラグビー、アメリカンフットボール、ラクロスでは接触型の受傷も多くみられます。

 

日本において競技人口からすると圧倒的にサッカーが受傷数が多いですが、プレーヤーあたりの発生頻度としてバスケットボールが一番危険な競技と言えるかもしれません。

 

学生や社会人、プロ選手またはレクレーションレベルでの競技レベルではあまり受傷頻度の差は見られません。競技レベルが高いほど身体能力も高いですが、それ以上に膝にかかる負担も多くなっていると思われます。データには差が見られませんが、普段以上に無理をしたプレーや疲労時に受傷のリスクが高いと思われます。

 

 

特に知っていてもらいたいリスクは性差です。男性に比べ女性の受傷リスクは2倍~7倍と言われています。競技によってばらつきがありますが、女性のリスクは高いので注意が必要です。女性は骨盤傾斜や大腿骨脛骨角度などの骨格的特徴や、筋力、関節の不安定性といった身体機能面での違いがリスクを高めていると考えられます。

年齢で言うと10代女性(中高生)が最もリスクが高くなっています。思春期以降ホルモンバランスが変わり始める時期です。中高生では部活動などで激しい動きを求められてきます。リスクが高いということをまず知っておく必要があります。

 

 

学生の部活で女子バスケ部、厳しい練習や試合展開によって疲労が蓄積された状態でのストップやカッティング、ジャンプ着地動作…。高リスクが重なった危険な状態と言えます。もちろん必ずしもこれが全てではありませんし、これ以外の状況で損傷することもあります。

 

 

前十字靭帯損傷に限らず、どんな外傷でも予防が大切です。接触型でも非接触型でも未然に防げる場合があります。

まずはリスクを知って、自分の身体が競技に適した動きができているのかを確認しておく必要があります。普段からステップやジャンプ動作を受傷予防の観点から取り組めていることはパフォーマンスの向上に繋がります。