膝前十字靭帯損傷について4 理学療法士から見た手術法

2019/07/01 ブログ
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膝前十字靭帯損傷はスポーツ外傷として多くの症例を経験しますし、長年に渡り医師では手術法、理学療法士ではリハビリ分野などで議論がつきない外傷です。

私は理学療法士なのでリハビリや予防を専門としていますが、前十字靭帯再建術において術後のリハビリを述べるにあたっては、手術法をおさらいしておく必要があります。今回は前十字靭帯再建術の手術法についてふたつの観点から述べてみたいと思います。ふたつとは、医師が行う一般的な手術法の確認と、手術法の違いがその後のリハビリにどのような影響があるかを理学療法士として知っておくことです。

 

 

1 前十字靭帯再建術

2 リハビリをする上で知っておくべき手術上の情報

 

 

 

 

 

1 前十字靭帯再建術

 

ひと昔では再建術以外の方法や人工靭帯の再建術もありました。膝蓋腱を用いた再建術も行われていますが、今回は最もポピュラーな関節鏡視下での半腱様筋または薄筋を用いた、2重束再建法を例に手術法を述べていきます。

 

 

 

まず、鵞足と言われる半腱様筋・薄筋の付着部から半腱様筋を切り取ります。半腱様筋の腱の部分を採取し束ねます。十分な強度が必要なためある程度の太さ(7㎜以上)が必要です。2重束再建と言って前十字靭帯の前内側部と後外側部の2本が必要であれば、それが2本必要となります。そのため肝心なのは採取した腱の長さと太さです。腱の太さと長さが足りない場合には、鵞足から薄筋も採取して十分な太さを確保します。

半腱様筋のみで再建靭帯を確保できればいいのですが、薄筋も採取するかは手術中に医師が判断することになります。

 

 

次に関節鏡を挿入し、痛んでいる膝の中を確認していきます。滑膜の増殖や関節包の充血、切れている靭帯の確認や切除などが行われます。ここで重要なのが、軟骨損傷や半月板損傷の有無です。術前にMRIを撮影しているはずですが、実際の損傷程度は関節鏡を入れたこのときに確認されます。必要があれば半月板損傷に対する手術がここで行われます。今回のブログでは割愛しますが、半月板にも手術が行われた場合、術後のリハビリプランに大きく影響することは知っておくべきです。

 

 

再建靭帯を埋め込むために脛骨と大腿骨に穴を空けます。脛骨側は外から関節の中に向けてドリルで穴を開けていきます。

大腿骨側に穴を開ける場合2つの方法があります。

 

ひとつは大腿骨の外から関節の中に向けて穴を開ける方法(outside-in法)です。脛骨側と同じ方法で大腿の外側から関節の中に向けて穴を開けるので、開けやすい方法です。

もうひとつは脛骨で開けた穴の延長でドリルを挿入する方法(inside-out法)です。関節鏡を挿入した穴からドリルを挿入する方法もあります。関節の中から大腿の外側に向かってドリルを進めていきます。この場合健康な前十字靭帯の走行に近い再建ができますが、関節内で狭いこと、大腿骨の内顆は丸いためきれいにドリルを挿入することが難しいという欠点があります。

 

2重束再建法ではこの穴を脛骨・大腿骨側に2つずつ開けることになります。

 

 

 

次にその穴に沿って再建靭帯を脛骨側から大腿骨外側まで通していきます。大腿骨外側で固定(エンドボタンを用いることもあり)した後に、脛骨側からテンションをかけて引っ張り、鵞足部で止めます。2重束再建法ではこれを2本入れることになります。

 

その後再建靭帯の最終確認を行い手術は終了します。

 

 

 

 

 

2 リハビリをする上で知っておくべき手術上の情報

 

理学療法士としてリハビリを担当するにあたり、手術法は知っていて当然です。大切なのは手術法は同じでも、個人によって術後リハビリは大きく変わるということです。

 

手術において知っているべきことは最低でも

 

 1 骨孔の位置、向き

 2 再建靭帯を止めるときの膝の角度、テンション

 

の2つです。

 

 

これは手術中に医師が個別に判断して行っているものです。その医師がoutside-inで骨孔を開けたのか、inside-outで開けたのか。骨孔の位置や向きは体格や術中の理由で微妙に変わります。

また、最後にテンションをかけて脛骨側で再建靭帯を止めたときの膝の角度によって、術後の可動域確保の予後が変わります。

 

 

リハビリでの注意点は次回のブログで述べていくつもりです。

 

 

 

 

ここで重要なのは、医師も理学療法士も形だけにこだわっているのは危険ということです。

 

確率された手術法、プランに沿ったリハビリプロトコール。これに固執しすぎると、いろいろな状況に対応できません。

 

 

 

昨年の冬にこんな経験をしました。

セミナーで前十字靭帯再建術が話題になりました。日本を代表する医師が、わが国における手術のガイドラインをつくっています。この手術法は現在このような利点がある、このような欠点があるなど、世界中の文献を集めて数年に一度ガイドラインを見直しているのです。

 

細かく言うと、脛骨側にはできるだけ前方に、大腿骨側はできるだけ後方に骨孔を開けることが解剖学に沿った位置だとか。ガイドラインを作っている医師は、正常な前十字靭帯の機能に近づける手術法を提案していきます。

 

 

ある医師が反論します。現場の医師の感覚で術中に変わることも必要だと言ったのです。ガイドラインを作成している名医よりも、わが国で

前十字靭帯では右に出るものがいないほどの重鎮です。その医師が現場での判断でいくらでも変わるものだと言ったのです。

 

 

もちろん文献やガイドラインを作成する人がいるおかげで、手術法なども発展し、多くの患者を助けているのは事実です。そのおけげで前十字靭帯だけでも年間数万人もの人を助けています。

手術を行っているのは現場の医師です。ガイドラインはあるけれど、長さによっては骨孔の位置を調整しなくてはならないとか、元々緩い膝だからもう少しテンションをかけて止めるべきだとか。その場の感覚や判断が重要です。

 

 

理学療法士もその通りだと思います。

術後のプロトコールは決まっていますが、その通りに進むかは感覚が大切です。この膝は今後どのように変わっていくか、神経質な人だからまず安心させなくては膝が曲がらないとか。

 

 

超一流の医師がおっしゃった言葉に救われた気がしました。

しかし、感覚を大切にするためにも行き当たりではいけません。術中に医師がどう判断して、どう行ったかという情報を共有する必要があります。

 

医師と対等な立場で会話できないといけません。そのような理学療法士は実は少ないかもしれません。

 

 

 

 

今回のブログは手術法についてではありましたが、リハビリを行うに当たって重要な要素をある意味自由に書かせていただきました。

これを踏まえて前十字靭帯手術後のリハビリについて次回書いていこうと思っています。