足関節捻挫について1 解剖と概論

2019/07/08 ブログ
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足関節捻挫はスポーツの中でも最も頻度の多い外傷です。今回から数回に渡り足関節捻挫についてブログを更新していきたいと思います。

足関節捻挫後のリハビリや予防に繋がっていくために、今回は足関節の解剖、捻挫についての医学的概念を述べておきたいと思います。

 

 

1 足関節・足部の解剖

2 足関節捻挫とは

 

 

 

 

 

1 足関節・足部の解剖

 

足関節・足部を構成する骨は下腿にある脛骨・腓骨、足根骨として距骨・踵骨からなる後足部と、舟状骨・立方骨・楔状骨からなる中足部、中足骨から遠位の前足部が挙げられます。

脛骨と腓骨も関節として動きます(脛腓関節)。距骨と脛骨・腓骨は距腿関節を構成し、距骨と踵骨は距骨下関節を構成しています。

足根骨は一つずつが関節として動きを持ちます。それぞれにはたらきがありますが、足関節捻挫では、後足部と中足部の間のショパール関節は最低限知っておくべきでしょう。

 

これらの各関節は靭帯で補強されています。足関節捻挫で知っておくべき靭帯として

前部には前下脛腓靭帯、外側には前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯・二分靭帯、内側には三角靭帯が挙げられます。

 

捻挫を靭帯損傷と位置づけると、各靭帯の損傷機序はそれぞれにあります。これら全てを解説していくと膨大の量になってしまいます。

 

 

いろいろ細かく述べましたが、足関節捻挫の中でも最もポピュラーな内反捻挫を取り上げていきます。

 

距腿関節、距骨下関節、前距腓靭帯、踵腓靭帯だけでも押さえておくとわかりやすいと思います。

 

 

距腿関節は底背屈を行います。距骨の形状から、背屈時に安定性が増します。逆に言えば底屈時に不安定になります。

距骨下関節は回内外の動きを行います。

それらの動きが合わさって、足部は円を描くように3次元に動きを持ちます。

 

 

 

 

2 足関節捻挫とは

 

足関節捻挫はスポーツ外傷と最も多い疾患です。競技にもよりますが、全スポーツ外傷の15%を占めます。足関節捻挫のうちの80%以上は内反捻挫(内側に捻じる)と言われています。今回はこの内反捻挫に限って話を進めていきます。

 

 

捻挫で痛める部位は靭帯に限らず、骨、軟骨、関節包、筋、皮膚などがあります。足部が内反すると外側が伸ばされて牽引されるストレスで靭帯損傷や剥離骨折などが起こり、内側は圧迫ストレスで軟骨損傷や骨挫傷を起こす場合もあります。

内反捻挫の場合前距腓靭帯の単独損傷は80%、前距腓靭帯と踵腓靭帯の複合損傷は20~40%、そのうち骨損傷は40%前後に起こるというデータもあります。

 

 

 

内反捻挫のほとんどは底屈位で起こります。ステップ動作やジャンプの着地などでつま先から接地する場合は底屈位となっています。外側から接地し内反への加速度を制御できなかった場合に足関節捻挫は起こります。

前述したように、構造上底屈時では距腿関節は不安定な状態なのがその理由です。距骨は底背屈の方向しか動かないはずですが、底屈時に内反され、距骨が傾斜することで捻挫が起こるのです。

 

接地時に底屈位になっている危険性でもうひとつ重要なのが、後方重心です。重心が後方にあって外側から接地することが一番危険です。

重心が後方に残ったままフェイントをかけようと一歩足を外側に踏み出した瞬間などが危険な状況です。

 

 

 

足関節捻挫は損傷の度合いによって3つに分類されます。

軽度では損傷組織の軽度な損傷でⅠ°損傷と言われています。予後は1~2週くらいでしょう。

中等度が最も多い損傷でⅡ°損傷と言われています。痛みや腫脹も中等度で予後は6週前後です。捻挫後に足が着けないほどの痛み・腫れ、内出血などが見られればおそらくⅡ°損傷でしょう。

重症なのはⅢ°損傷で、靭帯の完全断裂、ギプス固定や場合によっては手術適応となり、予後は3カ月くらいでしょう。

 

 

 

足関節捻挫の2大徴候は疼痛と腫脹です。痛みと腫れが起こることは想像しやすいと思います。RICE処置など初期対応が重要です。

ちなみにRICE処置については以前のブログを参照にしてください。

応急処置「RICE」から「POLICE」へ

 

痛みと腫脹は自然治癒過程の始まりです。以前のブログの通り、いかにこの時期を早く終えるかが予後に大きく関わってきます。足関節捻挫を甘く考えずに適切な処置をしてください。

スポーツトレーナーとしてこのような外傷が起こった場合には大げさに対応するくらいがちょうどかもしれません。

 

捻挫は病院受診をおすすめします。歩くのが痛むくらいの状態では病院受診は必須です。骨損傷がないかどうかだけでも調べておく必要があります。

 

 

 

理学療法士として知っておくべきこと、足関節捻挫に限って予後に関わる症状で重要なのは、「不安定性」と「背屈制限」です。

 

 

 

ここから先は次回にします。

底屈位・後方重心での設置、不安定性、背屈制限というキーワードは覚えておいてください。