腰痛について2 腰椎椎間板ヘルニアの概論
腰痛の中でもよく知られている腰椎椎間板ヘルニアについて解説していきます。
1 椎間板の構造
2 椎間板ヘルニアの症状
3 椎間板ヘルニアの好発部位
1 椎間板の構造
背骨にあたる椎骨がいくつあるか知っていますか?
頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の24個の椎骨を1本として脊柱となっています。
一つずつの椎骨には平らな面を持つ椎体と、その後方の椎弓で構成されていて、椎弓の真ん中に空いている穴に脊髄が通っています。
それぞれの椎骨は上下で連結しています。椎体と椎弓で連結していて、そのうち上下の椎体と椎体の間にクッションの役割をしているのが、椎間板です。
椎間板は内側にある柔らかい組織の髄核と、その周りを囲む線維輪から成っています。何かしらの原因で柔らかい髄核が線維輪を突き破って飛び出ることがあり、それを「椎間板ヘルニア」と呼びます。頸椎から腰椎までヘルニアは起こりますが、そのうち腰椎で起こるものを「腰椎椎間板ヘルニア」と言います。ほとんどのヘルニアは腰椎で起こります。
2 腰椎椎間板ヘルニアの症状
髄核は後方に飛び出ます。椎体の後方には脊髄が通っています。髄核が脊髄を圧迫するとさまざまな症状が出ます。
腰痛に始まり、臀部や下肢に放散痛やしびれの症状が現れます。下肢の一部の感覚が鈍くなったり、力が入りにくくなることがあります。時には排尿障害なども起こります。
どの部位にヘルニアがあるかによって、神経支配に沿って症状が出てくるのが特徴です。例えば第4腰椎と第5腰椎の間(L4/5)でのヘルニアの場合、下腿の外側に痛みやしびれが出たり、足の甲の感覚や足趾の伸展の筋力が低下することがあります。
腰痛の中でもこのような症状が出る場合には病院を受診しましょう。
腰椎椎間板ヘルニアで手術適応になる可能性は10~30%と言われています。保存療法と手術療法では予後に差はありませんが、手術の方が症状の回復が早い傾向があります。腰痛や下肢痛、しびれの症状では保存療法がおすすめですが、力が入らない、排尿障害などが見られれば手術を勧められることが多いようです。
3 腰椎椎間板ヘルニアの好発部位
腰椎椎間板ヘルニアの特徴として、男女比は2~3:1、好発年齢は20~40歳代、好発部位はL4/5間、L5/S1間です。
なぜこのような特徴があるかはわかってはいませんが、重労働者や職業ドライバーに多いとされ、男女比と好発年齢に表れているかもしれません。
好発部位が下位腰椎になるのには理由があります。
腰椎の構造上、屈曲と伸展が得意な部位です。5つの腰椎でおよそ65°の屈曲を行います。そのうちL4/5とL5/S1の間で半分以上の屈曲を行っています。過度に動きすぎてしまうためにヘルニアが多いとされているのです。
下位腰椎が過度に動き過ぎてしまうことで障害が起こるということを覚えておいてください。腰椎分離症でも同じことが言えます。
今回は腰椎椎間板ヘルニアの概論を紹介しました。腰痛の原因ではポピュラーなものですが、かといって腰痛=ヘルニアではありません。下肢症状が特徴なので、病態を知っておくことが必要です。
腰椎椎間板ヘルニアのリハビリや予防についてはまた次回に紹介します。