腰痛について4 腰椎分離症の予後

2019/07/23 ブログ
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腰痛についての内容が続きます。今回は成長期のスポーツ障害でよく起こる「腰椎分離症」について解説していきます。

成長期に起こる腰痛の約半数が腰椎分離症とも言われています。

学生でスポーツを行っている場合の腰痛は、分離症を疑って対応するべきかもしれません。

 

今回は腰椎分離症の病態と予後について書いていきましょう。

 

 

 

 

 

1 腰椎分離症の病態

 

腰椎分離症を簡単に言うと、腰椎の疲労骨折です。腰部にストレスがかかり続け、徐々に痛めていきます。腰痛がある場合とない場合もあり、ストレスがかかり続けていることに最初は気付かないかもしれません。

 

椎体の後方にある椎弓に疲労骨折を起こします。ほとんどの場合、過度な伸展と回旋でその椎弓にストレスがかかります。椎体の後方で椎間関節を介して椎骨は連結しています。過度な伸展・回旋でぶつかるようなストレスがかかり続けることが原因です。

腰椎分離症はぶつかっている上位の椎弓の下から骨折線が現れるのが特徴です。

レントゲン検査では腰椎を斜めから撮影して分離症を発見することができます。

 

しかし、疲労骨折とは言っても、骨折線が現れるとは限りません。腰痛の時点でストレスがかかっている場合には、椎間関節の滑膜炎や骨浮腫などが起こっている場合があります。その場合CT検査やMRI検査が有効です。

 

成長期でスポーツを行っている腰痛の場合、少し大げさかもしれませんが、MRI検査をおすすめします。最低でもCTは撮っておくべきです。ということは、腰椎分離症を良くわかっている医師に診てもらう必要があります。

 

初期で発見される場合と症状が進んでから発見される場合では、予後に大きな差が出ます。いかに初期に発見できるかがポイントです。

 

 

 

 

 

2 腰椎分離症の分類

 

腰椎分離症は、初期・進行期・終末期に分類されます。

 

初期

症状が出て時間が立っていない状況、症状がまだ軽い腰痛などでは初期と分類されます。

椎弓の疲労骨折の初期で、CTやMRIで椎弓根部に骨浮腫が見られる場合があります。腰の伸展や回旋で疲労骨折による腰痛が起こりますが、屈曲では腰痛の症状がないことが多いです。

 

 

進行期

進行期の中でも、骨浮腫がある場合とない場合で分けられます。神経根周囲に浮腫がある場合には、腰痛に限らず椎間板ヘルニアのような下肢症状が起こる場合もあります。この時は腰の伸展・回旋だけでなく屈曲でも腰痛が起こります。

腰椎分離症を椎間板ヘルニアと間違われるケースがあります。25%の確率で間違われるという報告もあります。

CTやMRI検査が必要な理由はここにもあります。

 

 

終末期

症状が始まってすいぶん期間が立っている場合には終末期となってしまっているかもしれません。

この時期は疲労骨折というよりは完全骨折となっています。椎弓がはがれている訳です。

この時の痛みは疲労骨折の痛みではありません。偽関節となっている状態、椎間関節の滑膜炎などでの痛みの症状となります。

 

腰部の伸展・回旋で腰痛が起こります。屈曲では痛みが出ないケースがあります。

 

 

 

 

 

3 腰椎分離症の予後

 

初期・進行期・終末期によって予後が大きく変わってきます。

足の骨を骨折したことを想像してください。骨が癒合するまでギプス固定しますよね。

腰椎分離症も、予後の決定は骨の癒合となります。初期・進行期・終末期で骨の癒合するのか、またその期間が決められます。

 

 

初期

初期の骨癒合率は94%、癒合期間はおよそ3カ月です。

3カ月の安静で94%の人は骨が癒合するという意味です。

コルセットを装着し、3カ月間運動を休止する必要があります。スポーツの限らず、腰の伸展・回旋の禁止となり、コルセットが必要なのです。

 

 

進行期(骨浮腫がある場合)

この場合の骨癒合率は64%、癒合期間はおよそ5.5カ月です。

初期に比べ安静期間が長く、癒合する可能性も低くなってしまいます。

 

 

進行期(骨浮腫がない場合)

この場合の骨癒合率は27%、癒合期間はおよそ6カ月です。

骨浮腫がないということは、癒合の可能性が低いということです。浮腫がある方が重症と感じるでしょうが、癒合するかどうかで言えば浮腫が起こらない状態の方が重度と言えます。

 

 

終末期

この場合は骨癒合率は0%です。完全骨折で偽関節となっています。

 

 

 

進行期で骨浮腫がない場合と終末期では、骨癒合を諦めることとなります。6カ月安静にして27%しか癒合する確率がないのです。

この場合スポーツ復帰は早くなります。滑膜炎などからくる腰痛がなくなれば運動ができます。

 

 

 

 

ここで重要なことは、癒合しないということは今後の人生において爆弾を抱えてしまうということです。

成長期にスポーツはできますが、腰痛と付き合っていくことになります。

スポーツを辞めた後にも神経根症状なども含めて腰痛に悩まされることになります。

 

成長期にこれだけの決断が求められることになります。

 

 

癒合を待つことが腰椎分離症で一番大切なことです。

初期でも3カ月安静となります。

スポーツしたいでしょうが、今後の人生においては必要な期間だと知ってください。

 

 

成長期にこれだけの障害を抱えてしまうことになると覚えておいてください。

成長期でスポーツをしている場合の腰痛の50%が腰椎分離症と言われています。

 

「腰痛がとれたら運動していいよ」と簡単に言ってしまう医師がいることもあるでしょう。

少し大げさでもスポーツ障害を知っている医師に診てもらうことが大切です。