腰痛について8 慢性腰痛の原因
腰痛の中でも慢性的な腰痛に悩まされている方は多いでしょう。
慢性的に痛みが続いている時点で、腰痛の原因ははっきりしないことが多いと思います。
それだけに腰痛を抱えたまま、痛みがあることが当たり前と諦めている人もいるかもしれません。
慢性的な腰痛のメカニズムについて解説していきましょう。
一番大切なことは、痛みを感じているのは「神経」だということです。
痛覚が興奮して脳に伝達することで痛みを感じています。
どこかの組織が損傷した場合、痛覚が脳に伝達をして、その部位が痛いと感じているということです。
1 痛覚の誤作動
逆に言うと、どこも損傷していなくても、痛覚が興奮していれば痛みは感じてしまいます。
一見あり得ないと思われがちですが、この痛覚の思い違いはよく起こることなのです。
神経にも血管が通っていて栄養を受けています。神経も阻血状態になることもあります。
痛覚などの感覚神経は自律神経の影響を受けています。交感神経優位で興奮状態にあると、感覚神経も興奮する場合があります。
どこも損傷していなくても、神経は状態によって誤作動を起こすことがあり、それにもいくつか理由があるのです。
2 腰部は脊髄に近い
脊柱には脊髄という中枢神経が通っています。
頭部以外では、脊髄から身体を動かすなどの運動神経が出て、痛覚などの感覚神経も脊髄に集まります。
腰部は脊髄に近いという理由から、痛覚の誤作動が起こりやすい場所です。
例えば、椎間板が圧迫されている感覚で痛覚が興奮し、多裂筋などの筋を防御的に収縮させます。椎間板が圧迫されることは起きていれば当たり前のことですが、このことだけで多裂筋に痛みが出たりします。
3 腰部には感覚神経が豊富にある
また、腰部には痛覚などの感覚神経が他の部位に比べて多いということも、腰痛が起こりやすいという理由になります。
腰部には骨・軟骨・関節・関節包・滑膜・靭帯・椎間板(髄核・線維輪)・筋などの軟部組織が豊富にあります。
椎間板・左右の椎間関節だけでも連結している部位が多いのが椎骨です。それがいくつも連なっていることを考えれば、感覚神経がいかに多く集まっているかがわかります。
4 痛みの閾値が下がる
痛覚は常に興奮していると痛みを感じやすくなります。少しの刺激でも興奮するようになってしまいます。神経が興奮する閾値が下がるということです。
また、鋭い痛みなどが残存してしまうこともあります。本来であれば損傷部分は治っているのに、鋭い痛みを感じた痛覚がそのまま痛みを感じ続けることもあるのです。
これまでのことをまとめると、神経とは繊細で敏感なものであるからこそ、意外と誤作動を起こすことが多いということです。腰部には誤作動を起こしやすい条件が重なっていることが慢性腰痛の原因となっています。
また、交感神経も大きく関係していて、「痛い→防御する→交感神経位優位(ストレス)→痛みを感じやすくなる→痛い」などの悪循環に陥る場合もあります。
慢性腰痛の原因で考えれらることはいくつもあります。
身体の硬さ、筋力不足、姿勢、動作などについても腰痛の原因になりますが、それ以外でこれだけの理由が挙げられます。
むしろ身体機能的な問題よりも、神経系の痛みの方が重要とされています。
慢性的に腰痛が続いている時点で、たくさんの原因が絡み合っているのは確実で、その改善は容易ではありません。
次回のブログで、慢性腰痛の改善策を紹介します。